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赤外線カメラの評価方法
カメラの性能を評価する上で、[SiTF(Signal Transfer Function)]、 [NETD(Noise Equivalent Temperature Difference)] の2種類の特性値があります。
評価[1] SiTF
SiTF(Signal Transfer Function / 信号伝達関数) は、被写体温度が1℃変化した時のデジタル量(電圧値)の変化で表します。
- [A] 1℃で 50 digital 変化した場合は「SiTF = 50」
- [B] 1℃で 100 digital 変化した場合は「SiTF = 100」
SiTF = グラフ(画像)の温度変化1℃あたりの輝度変化量( グラフ a )
評価[2] NETD
NETD (Noise Equivalent Temperature Difference / 雑音等価温度) は、カメラでどれだけ細かい温度差を見分けられるかの指標です。
NETD(雑音等価温度差) ⇒ 小さいほど微小温度差を検出
NETD (mK) = ノイズ ÷ SiTF(輝度値/K)
(カメラ性能を評価するために弊社では1フレームの面内輝度標準偏差を使用しています)
30℃と30.1℃の差がわかるカメラの場合、NETD = 100mK (100mK = 0.1℃) となります。 この値は、ノイズを SiTF で割ったものになります。
ノイズ測定方法
1画面のノイズ測定方法
1フレーム(内の輝度)の標準偏差で行なう場合
ノイズ = 標準偏差σ
各画素の時間的のノイズ測定方法
ノイズ =(MAX - MIN)÷ 6
NETD 測定
ノイズには、面内ばらつきと時間的変動ばらつきの2種類があります。
ここに表示されている方法は、防衛省規格にある遠赤外線カメラの性能評価方法です。
面内ばらつき
カメラで平面黒体炉のような温度均一面を撮像して、そのばらつきを測定し計測します。
10℃の基準熱源を撮影
30℃の基準熱源を撮影
- NETD面内 =
-
30℃の1フレームの標準偏差 = σ輝度の平均値 X30℃ - 輝度の平均値 X10℃× (30℃ - 10℃)
防衛省規格:NDS C0212Bより参照
時間(的変動)ばらつき
カメラで平面黒体炉のような温度均一面を撮像して各画素が時間による変化量を測定し、ばらつきとします。
10℃の基準熱源を32フレーム以上撮影
30℃の基準熱源を32フレーム以上撮影
1フレーム目のNETD (NETD1)を算出します。
- NETD1 =
-
1フレームの標準偏差 σ1輝度の平均値 X30℃ - 輝度の平均値 X10℃× (30℃ - 10℃)
2フレーム目以降も同様に、NETD2, NETD3 ,NETD4 … NETD32 … と各フレームごとのNETDを算出します。
- NETD時間ばらつき =
-
32個以上のNETDを求めて、平均値を計算する。
または、中央値を求める。
防衛省規格:NDS C0212Bより参照
NETD での盲点
カメラカタログで表示されているNETDには、大きな落とし穴があります。
NETD 統一された規格で測定されていない!
ばらつきを測定する定義が規定されていないため、メーカー各社で測定方法が異なります。 (公表されていないことが多い)
- レンズの焦点距離、F値、材質
- 画像処理を行った後の値かどうか
- 被写体温度は、何度か?
- カメラの環境温度は、何度か?
- 時間軸か、平面ばらつきか?
- シャッターを切った後か?
- F:1.0とF:0.8のレンズでは、NETDが1.5倍ほど良くなる。
NETD に影響する要因として、被写体の温度、レンズのF値、およびカメラの周辺温度に非常に左右されるため、NETD だけで判断するのは大変危険です。
温度勾配時の NETD
遠赤外線カメラは、温度変化時、NETD は悪くなります。 これは、筐体やレンズ、FPA の温度が勾配によりズレが発生することにより、NETD が悪くなります。
弊社のカメラは、恒温槽で0.5℃/分 または 1℃/分 の温度勾配を掛けたとき、NETD を測定しています。 温度が上がり下がりする時に、NETD が悪くなる傾向があります。
グラフ「NETD」縦軸:NETD(mK) 横軸:時間(秒)
カメラの環境温度を 0℃~50℃ まで変化させ、その時のNETDを測定
温度勾配は、0.5℃/分 にて上昇
環境温度が変化している時と環境温度が低い時に、NETDが悪くなる。
車載アプリケーションでは、重要な評価項目である。
※弊社のカメラを購入した時に別途費用はかかりますが、温度勾配時のNETDを提供することは可能です。
赤外線カメラの簡単な評価方法
赤外線カメラを、手や机などでレンズをふさいだり、アルマイト処理された板や黒色に塗装された金属をレンズの直前で撮影する
(表示ソフトで)表示される最大温度と最小温度の差を記録する。
その温度の差を 6 で割ると NETD に近い値が算出される。
(弊社シャッタレスビューアでの測定時の画面)